Day2-4 動物虐待か伝統文化か!?初めての闘牛観戦前に知っておきたいこと
Hola!! 『ある日本人観光客のスペイン旅行記』へようこそ!
スペイン旅行2日目、マドリード2日目の夕方。
「ある日本人観光客」は、この日のメインイベント会場であるラス・ベンタス闘牛場に向かいます。
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マドリードの闘牛場、ラス・ベンタス
目的はもちろん、スペインの国技と言われる“闘牛”観戦!「ある日本人観光客」にとっては、初めての闘牛観戦です。
初めての闘牛観戦に先立ち、今回の記事では、スペインの闘牛について予習したいと思います。
チケットの購入
チケットは、インターネットでの事前購入・前売り・当日売りで購入することが可能です。(当日の売り場前にはダフ屋も多数ですが・・・)
イベントや人気闘牛士が出場しない場合、当日売りでも問題ないようで、「ある日本人観光客」の観戦日は、当日開始時間ちょうどくらいに到着しましたが、最前列の席も確保でき、空席もそこそこありました。
チケットの値段は、日当たりと闘技場からの近さ(スタンドの前後)により異なります。
日当たりは、日なた(SOL)・日なたと日かげの中間(SOL Y SOMBRA)・日かげ(SOMBRA)の3種類で、太陽のまぶしさを受けない“日かげ”席が最も高く、日なた席の2倍以上の値段になります。
また、闘技場からの近さは、最前列(BARRERA)から細かく設定されており、最後部の座席と比べ10倍以上の値段になります。
スペイン闘牛の流れ
闘牛は、日本のように、牛と牛を戦わせるスタイルの闘牛もあれば、牛と闘牛士が戦うスタイルの闘牛もあります。
牛と闘牛士が戦う形の闘牛は、スペイン以外でも、ポルトガルなど、世界各地で行われています。
中でも、スペインでは、闘牛が国技とされ、盛んに行われています。
闘牛士の入場
1日の闘牛に出場する闘牛士・マタドール(Matador)は3人。このマタドールを中心とした闘牛士チームがそれぞれ2頭の牛と闘牛を行うため、計6試合の闘牛を観戦できます。
「ある日本人観光客」が観戦した日に登場したマタドールは、下画像の3人で、仮に「青」「緑」「白(黒?)」と名付けさせていただきます。(ただし、靴下は全員ピンク!)
青は、派手な男。(闘牛士らしいきらびやかな衣装に、黄金の髪が映える金髪の貴公子)
緑は、見得を切る男。(ジャパニーズ伝統文化である“歌舞伎”のように、何度も見得を切った役者)
白は、魅せる男。(色々な意味で魅せてくれた、緑とは別の意味の役者(詳しくは次回記事で紹介予定))
牛の登場
門が開けば、立派な角をもった牛が、登場します。
突然、闘技場に放たれた牛は、興奮状態であったり、戸惑ったり、様々な反応を見せますが、この登場の勢いがあればあるほど、観客の期待も高まり、大きな歓声が沸きます。
登場した牛をさらに挑発するのは、助手の役割です。
助手たちは、ピンクのマント“カポーテ(Capote)”により、牛をあしらい、挑発し、牛の潜在能力を引き出します。
この間、マタドールは、牛の運動能力や性格・癖を見抜き、さらには、このカポーテによる牛さばきに参加していきます。
なかには、両膝をつきながら牛をかわすなど、スリリングな大技を繰り出す闘牛士もいます。
槍方の場
牛のあしらいの後に活躍するのは、目隠しをされた馬に乗った闘牛士・ピカドール(Picador)です。
ピカドールの活躍する場面は、“槍方の場”と呼ばれますが、このあたりから、血を見る場面が多くなりますので、苦手な方はご注意ください。
周りの闘牛士たちは、巧みなカポーテさばきにより牛を誘導し、ピカドールの乗る馬の方へ徐々に近づけます。
近づく牛に対し、ピカドールは、馬上から牛の首後あたりを槍で突き、牛の体力を奪いにかかりますが、牛も必死に抵抗し、馬を激しく押し込みます。
馬は防具をまとっているものの、牛の抵抗は激しく、馬ごと押し倒しそうなほどの勢いを見せます。
銛(もり)打ちの場
槍方の場が終わると、次なる場面“銛打ちの場”に移ります。
銛打ちの場では、バンデリジェーロ(Banderillero)が、2本1組の飾り付きの銛を3回、計6本の銛を牛の背に打ち込み、牛に“活”を入れます。
「ある日本人観光客」は、この銛打ちに、最も、日本文化へ通じる感覚を受けました。
色とりどりに装飾された銛は、牛への“はなむけ”であり、特に白色の銛は、この後徐々に牛自身の血で赤く染め上がり、牛が最後を迎えるときには、その死を彩りました。
映画『おくりびと』でよく知られるようになった、日本独特の風習“死に化粧”にも似た意味を感じさせられます。
ムレータの場
銛打ちの場が終われば、いよいよ真打ち“マタドール”が登場し、牛との一対一の対決が始まります。
牛と向かい合いったマタドールは、赤い布のムレータ(Muleta)を使い、牛を華麗にいなします。
足を動かさず、ムレータさばきのみで牛をかわすマタドールの姿は、観客を魅了します。
その姿が華麗であればあるほど、観客は称賛を込め「オーレ!」「OLE!!」と、掛け声をかけます。
牛の登場から見計らってきた牛の能力や性格を判断し、ぎりぎりの間合いで牛をかわすマタドールの姿は、まさに“蝶のように舞い”という言葉そのものでしょう。
また、この瞬間にも、日本文化に通じる動作がありました。
興奮し、いつ襲いかかるかわからない牛に背を向け、マタドールが、余裕であることを観客にアピールするように闘技場を歩く姿は、ジャパニーズ伝統文化である“歌舞伎”の“見得を切る”動作と重なります。
真実の瞬間
“蝶のように舞い”の後に待ち受けるのは、もちろん“蜂のように刺す”
いよいよ、闘牛は最後の場面を迎えます。
場内は一瞬の静寂・・・
剣を手にしたマタドールは、牛と正対し、狙いを定めます。
次の瞬間、巨大な牛を目めがけ、マタドールが突進!
“殺(や)るか?殺(や)られるか?”まさに“真実の瞬間”!!
その奥にある、牛の急所を射抜くため、首の後に剣を突き刺します!!!
ムレータを使った華麗なかわし技が、“蝶のように舞い”であるなら、真実の瞬間は、まさに“蜂のように刺す”という言葉そのものです。
見事急所を射抜けば、牛は崩れるように倒れ、美しい死を迎えます。
美しい死が訪れた時、勇敢にたたかった闘牛士と牛には、称賛の拍手が贈られ、闘牛場が歓喜に包まれます。
牛の美しい死は、この一刺しが一発で決まるかどうかにかかっています。
もし、致命傷を与えられなかった場合、この一刺しは時間いっぱいまで繰り返されます。
それは、牛の苦痛を繰り返すことであり、闘牛が残酷なショーに映ってしまいます。
闘牛士と牛の退場
果敢に闘い、死を迎えた牛たちが退場します。
装飾された馬に引きずられ、闘技場を後にする牛の姿は、公開処刑なのか?勇敢な戦死をたたえる儀式なのか?
この瞬間は、見た者それぞれに、様々な感情を呼び起させるでしょう。
確実に言えることは、「ある日本人観光客」の脳裏には『ドナドナ』のフレーズが流れていたということです。
スペイン闘牛の今
近年、スペインでの闘牛人気は低落を続けています。
サッカー人気が高まるのに対し、闘牛の観客数は激減し、闘牛のテレビ中継が終了するなど、国技としての威厳は失われつつあります。
また、牛に槍や剣を何度も突き刺す残酷性、牛の死をショーとして見世物にしているという動物虐待の観点からの批判が強まり、ついに、バルセロナがあるカタルーニャ州では、闘牛禁止の州法が可決され、2012年1月1日より州内での闘牛興業が廃止されました。
カタルーニャは、先週スペインからの独立を問う住民投票の実施を発表するなど、独立機運の高い地域でもあり、闘牛の廃止も“文化の独立”を強調する、政治的な面も見え隠れするところではありますが、闘牛人気の低落の後押しを受け、他州への飛び火が懸念されています。
一方で、スペインの巨匠・ゴヤやピカソが愛し多くの作品を残したように、闘牛の最後を“牛の美しい死”と表現するように、闘牛を芸術としてとらえる声があります。
伝統文化か政治か?芸術か動物虐待か?スポーツかショーか?・・・
闘牛は、見る者に多くの問いかけをします。
そういった意味でも、スペイン訪問の際は、ぜひ闘牛観戦をオススメします。
本日はここまで。
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